海辺のクリスマス

 湘南にも海辺のクリスマスがやってきた。一色海岸や森戸海岸辺りの海辺のレストランに立ち寄って昼間から江ノ島灯台を遠望し地料理でも食べてからバレエを見に行こうかと願望を持っていたのだが、全く持っての幻想で今朝はたまりにたまった仕事ではじまったのであった。六本木辺りのレストランで一人でワインを飲みながら肉料理を食べているような感覚に昨今の男性たちは憧れるようだが、そういった楽しみとはまた一味違う世界がある。片瀬江ノ島の海岸沿いに「四季菜」という店がある。ここは鵠沼の地料理を出してくれる店だ。湘南エリアは地元の人しかしらない店もちょこちょこあり、フラダンスやフラメンコを楽しむ事ができる。
冬もウェットスーツを着て海と向かい合っている男女たちを遠望する。真っ白の砂浜を歩く―いかに生きることを楽しむか、そして生きることそのものと真摯に向かい合うか、そこから全てがはじまる。

東京は冬らしくなってきた。一方、地球の反対側の南半球は夏真っ盛り。オーストラリアの砂漠や海に憧れるこの頃だ。オーストラリア・バレエ団を現地に見にいけたらというはかないかなわぬ願いが脳裏をよぎる。


スズキ・バレエ・アーツ第21回 「くるみ割り人形


 スズキ・バレエ・アーツの今年の「くるみ割り人形」は金平糖の精は滝井真樹子と王子は今井智也だ。その特徴は演劇的で流れるような情景を生かした演出といえる。今回は舞台全面に照明を仕込んで、人々の群れや心理を描写するなど興味深い演出効果が目立った。クララを演じるのは遠藤千尋だ。アイマスクをした神秘的なドロッセルマイヤーを踊る川島春生の踊りは良くなってきた。クララは少女のときめきや悲しみといった表情をハートいっぱいに表現する。第一部では妹が人形をプレゼントされるとドロッセルマイヤーとともに踊る。すると、その場に兄フリッツたちが登場するように子どもの世界に着目をした演出に鈴木の今回の上演に対する姿勢を感じる。また大人びてきた吉田邑那が演じるハレルキン、浜島冬美が演じるコロンビーヌはヨーロピアンな演出が目立った。雪の女王を演じる新井望は明るい表情と溌溂とした演技が見事な踊り手だ。対する雪の王(須藤悠)はくっきりとした踊りを見せる。若い踊り手たちが踊った雪の精たちはロマンティック・バレエの醍醐味を見事に描いた。若い踊り手の肉体が演出を融合した例だろう。
 宮廷の踊りが披露される第二部ではロシアの踊りを描いたコミカルな岩上純の踊りが演技がひときわ目立った。花のワルツが舞台を盛り上げたあとにグラン・パ・ド・デゥになる。今井が演じる王子は溌溂とした表情と肉体が放つエロスが印象的だ。対する滝井は古典的な表情のある踊り手だ。マッツ・エック作品やドイツ・ライン・オペラ・バレエでの活躍がわかるヨーロピアンで円熟した演技が見事だ。グラン・パ・ド・デゥではその二人の魅力が相互に融和し息の合った演技となった。
 このシーズンに上演されるこの演目の中では神秘的なイリュージョンの持ち味や子どもたちの表情といった深みを大切にする姿が印象的な公演だった。


鎌倉芸術館大ホール)