データで読むコンクール

 今年のあきた全国舞踊祭モダンダンスコンクールが終わったようだ。データを見ているのだが、シニア部の結果を解析してみよう。コンクールには採点表が解かるコンクールがある。ネットからでは採点表がないので、誰がどういう評価をしたのかということが今一歩見えないのだが、順位からざっくばらんに考えてみよう。
結果ページ:http://www.akicon.net/akicon26/akicon26-senior.html


 1位の海保文江は現代舞踊協会の新人賞・DancePlan賞を今年ダブル受賞しており、今年は絶好調といったところだ。エネルギッシュな演技はこの作家ならではでいつみても心地良い。2位の大竹千春はここ数年コンクールや公演で力作を発表しだしていることもありボルテージが上がってきた。海保・大竹共に新作でありどんな作品か気になっている。3位の野村真弓は創作では抜群の伸びを見せている作家だけあり、各コンクールソロ部門での激しい追い上げは注目に値する。課題は振付や構成であり、この点さえクリアできれば創作で見せる感覚の良さが大きく伸びる作家だ。4位の富士奈津子は演技が抜群にいい作家であるため、作品の芸術性をさらに練り上げていく事が重要である。5位の所夏海も見逃せない。この作品でこうべでは1位受賞しているため作家の課題は来シーズンといったところだ。
 林芳美、久住亜里沙、高橋あや乃は安定して入賞するようになり、実力がついてきていることを感じさせる。
 期待の新人は鈴木いづみ、青木香菜恵、岡野友美子、小川麻里子、そして瀧澤悠紀だ。データから見る限り一定の評価を得だしているようだ。鈴木麻依子は「火の鳥」や来年の新国立劇場の野坂作品など重要な作品に何度もキャストとして入るなどシーンを大きく担い続けている知る人とぞ知るとても大切な作家であるため周囲の認知と評価が欲しくもある。
 特筆すべき興味深い傾向も見ることができる。バレエでも大きな評価を得ている竹中優花(貞松・浜田バレエ団)によるコンテンポラリーダンス、大竹と共にダイナミックなステージングで観客を楽しませてくれるベテラン幸内未帆も入賞を果たし実力を感じさせた。彼女たちの作品がコンクールで立派に通用していることは、コンテンポラリーダンスという枠組みを論じる上でも重要に思える。竹中が加藤きよ子の振付でコンテンポラリーダンスを踊っていることはモダン=コンテンポラリー的な評価軸でも立派に通用していることだし、いわゆるバレエでいうネオ・クラシックとコンテンポラリーダンスという概念枠組みついても考えさせられる出来事だ。バレエの実演家の中には現代舞踊だと社会的に位置づけられることが多い上田遥や中村しんじの振付をネオ・クラシックと位置づける作家も少なくない。一方、幸内はいわゆるモダン=コンテポラリーの文脈から出てきていない作家だが、NYCでの活動を経て現在展開してる作風は冴子や菊地尚子にも通じるテイストがあり、その作品が評価されていることも今回の結果の中で大切なポイントといえよう。

 年度内のコンクールは終了した。来年春の現1でシーンがどのように展開していくかが楽しみだ。