磐田から東京へ

 静岡は海際のためか空気に湿気が少なくて私には過ごしやすい。東海道五十三次ではないが、東海道沿いの鉄道ができる前の江戸の市街地を楽しむ。磐田は実際にいろいろ史跡があるようで面白そうな土地だ。これから空気に水分がムンムンしている、最も私にとってきつい8月の中旬の東京に戻るかと考えるとユーウツになる。正午過ぎに列車に乗る。だだっぴろいプラットフォーム、周囲は「濃縮100%日本の夏」ともいうべき風景だ。
 帰り際に新幹線の掛川の駅で2−3年前を思い出した。先日亡くなった三輝容子先生たちご一行と石井漠・小浪の再演を見にいくときに出会ったということだった。現代舞踊について車中でいろいろ話したものだった。
 新幹線の車窓からは東海地方の田園風景や工業地帯が見えた。そして、空気に湿気の多い東京に戻ってきた。この時期を乗り切ると若干楽になってくる。

 中部地方ではこの間、折田克子が本当にいい踊りを披露したようだ。たまたま石井舞踊団の関係者がそれを見ていて、石井舞踊団きっての名ダンサーであり後に独立をした石井小浪の話題になったようだ。石井小浪、石井みどりらはいずれもそれぞれ独立をした舞踊団のトップダンサーだったこともあり、その表現に通じるものがあるようだ。


石井小浪先生記念碑

佐藤典子舞踊研究所の前庭には石井小浪の記念碑がある。石井は在りし日に磐田を訪れたこともあったという。石井は腕の動きがきれいな踊り手で、美しい足も持っていた。そんな小浪の面影を伝えるような記念碑である。特に正面から見たときに漂う空気はこの踊り手が一流の踊り手であったことを伝えている。関係者の詩文を谷桃子が書いたというレリーフも飾られている。

(佐藤典子舞踊研究所 http://www11.plala.or.jp/ns-dance/newpage602.html )