永瀬訓子、渡部倫子、多田直子 ほか

 一年前に下北沢の都市開発に反対する会議、Urban Typhoon http://www.urbantyphoon.com/infoj.htm でGoogle Earthを利用したパフォーミングアーツに関するプロジェクト、Sode Mapping http://www.urbantyphoon.com/watanave/themej.htm という企画を行った。
 それから1年ぐらい時間が流れたが、下北沢は少しづつ変化をしてきているようだ。当時のプランとしてはここに表参道や六本木のようなヒルズをつくるということがあったのだが、この会議の成果がどう反映されたかということが気になる。
 下北沢は主に小演劇関係では東京のパフォーミングアーツの産業基盤の1つだ。ダンス公演も良く行われている。


Dance 夢洞楽 2007

 今回のDance夢洞楽では若手の多田直子や北海道の渡部倫子が作品を持ち寄っていた。また最も印象深い作品を発表したのは永瀬訓子だった。永瀬の「Aspirin」はこのところ、興味深い作品を発表しながら、大きなブレイクスルーを狙えていなかったキャリアのあるこの若手作家の大きな飛躍ともいえる作品だった。共演するのはSisters of Maiden(杉原ともじ、島田美穂)だ。暗闇の中からメイドのようなドレスを着た杉原ともじと島田美穂が現れる。島田にとっては可愛らしい人形のようなキャラクターは得意中の得意といえる。一方、メイドのようにドレスアップをした女装の杉原は、島田とのおそろいのロングヘアと髪飾りが良く似合い、なかなかチャーミングだ。杉原が座り込んでじっとしている傍らで島田はバレエ音楽と共にコケティッシュに見事なテクニックで踊ってみせる。やがてミュージカルの猫のようにメイクアップをした永瀬が登場するとそんな二人の横で感情表現豊かに踊りだす。杉原にメイドのようなコスチュームを着せるという奇抜なアイデアもさることながら、作家も含めた三人の出演者の個性を見事につかんだキャスティングと、薬物の名前をタイトルにするというセンスも印象深い。このキャスティングで同じ作品で東京新聞のコンクールをはじめ様々なコンクールの創作部門に出てみてもいいかもしれないと思ったりもした。
 札幌出身の渡部倫子の「飛ぶ鳥の夢はもう見ない」は5月にシアター1010で上演された作品だ。今回は上演する空間や演出を使いながらややコンセプチャルにモチーフを描き出していた。能藤玲子の作品で見せるような躍動感ある身体表現も時折登場し見ごたえのある作品となった。さらに若手作家として活動を重ねている多田直子「残香」は構成のきいた見ごたえのあるソロで積極的に活動を重ねるこの作家の一つの地平を感じさせた。女性性を前に出すという部分をやや政治性や文化とからめて見ても発展の見える作品といえるだろう。
 新人作家の上田チカ「夢と甘い涙」、本柳佳苗&岩戸洋一の空間演出にも利用できる衣裳を用いた川田佳苗「天使の腕に抱かれて」、あちこち(日方千智、奥村歩美)はいずれもスタンダードな作品構成や作舞を用いた内容だが、完成度を伴った表現でありこれからの活動が楽しみな作家たちであるといえる。現代の中堅若手作家では創作におけるモチーフで独特な感覚を持っている菊地尚子や矢作聡子、そして皆川まゆむ、野村真弓や山中ひさのがヒントになるだろう。
 ベテラン作家も良質な作品を発表していた。日々野京子「ここにしかない夏」は乙女たちによる涼しげな感覚を上品に描き出していたし、さとうみどり「人は影」や杉江良子「緑の傾斜」は舞台美術を用いながらそれぞれ得意とする作風の表現を展開していた。さらに谷之梨江「偶像の声」では小川麻里子や石丸眞理らがオリエンタルで宗教的な踊りを使いながら意空間を描き出していた。
 アンデパンダン的で様々な作家が作品を持ち寄っている印象があったが、それぞれまとまった内容であるように感じた。

( ソワレ 北沢タウンホール http://maps.live.com/default.aspx?v=2&cp=35.662143~139.669803&style=h&lvl=16&tilt=-90&dir=0&alt=-1000&sp=Point.py99n8wn571p_%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E4%B8%96%E7%94%B0%E8%B0%B7%E5%8C%BA%E5%8C%97%E6%B2%A2%EF%BC%92%E4%B8%81%E7%9B%AE%EF%BC%98%EF%BC%8D%EF%BC%91%EF%BC%98___&encType=1 )