風待月の宴

砂川敬介「風待月の宴」

江口・宮舞踊団で舞踊家として活動し、江口の代表作や若手たちの定期公演に出演をしていた砂川敬介の喜寿のお祝いを兼ねた催しものが行われた。といっても、世間一般で砂川というと後の芸能界での活動が有名である。この日も踊りの話はほとんど語られず、江口・宮舞踊団の関係者がごくごく少数来ていただけだった。砂川は江口・宮舞踊団時代にNHKの初代体操のお兄さんとなり、以後、映画やミュージカル、芸能界での仕事へと移行していく。妻の大山のぶ代は「ドラえもん」の声優として有名だ。ちなみに大山と結婚したときに、砂川は「結婚したい男No.1」だったそうだ。この時の第3位は巨人の長嶋だったそうで「大山はNo.1の男を射止めたのだ」と大山の長年の友人でもある黒柳徹子はスピーチで語った。この日は黒柳のみならず、若松美黄が振付けたこともあるフォーリーヴスなど縁深い芸能人が多く列席しスピーチをして砂川の長年の芸能活動を語り祝った。さらに大山の関係から「ドラえもん」のそれぞれのキャラクターの声優たちも大集合した。
 宴会の席では砂川はこの場で一人芝居「風待月の宴」を披露した。内容は癌で余生が3ヶ月と宣告された芸能プロダクションの経営者の物語である。ところどころで砂川の歌手としてのレパートリーも披露された。この芝居のセリフはいわゆるテレビドラマのセリフに近い解りやすいものだ。ところどころにエノケンが歌っていた歌や帝劇のエピソードも盛り込まれ、戦後の芸能界の感じさせもした。ちなみに私が臨席したのは、「徹子の部屋」や「トゥナイト」といった名テレビ番組の関係者だった。芸能界の関係者の姿が少なくなかった夜だった。

(6月25日 目黒雅叙園 円扇の間)