地唄舞「八島」、「蛙」、「雪」

 現代の地唄舞の踊り手の中でも人気がある踊り手の一人、葛タカ女の公演が行われた。皇居の近くは六月の東京らしく蒸し暑く、車の窓から心地の良い風が入ってくる。
 
 ある批評家がいうには、井上八千代、武原はん、吾妻徳穂らが10年前にほぼ同じ時期に他界したらしい。洋舞では宮操子が100歳(数え年のため実質101歳)で大野一雄は100歳を迎えたとはいえ、邦正美、小牧正英など明治生まれの舞踊家たちが他界している昨今でただ、しかし着実に時は歩み続けているという会話を交わした。


 葛の公演会場でびっくりしたのは、モダン=コンテンポラリーのある新鋭作家がきていたということだ。邦舞の会で売れている現代舞踊やいわゆるコンテンポラリーダンスのアーティストたちと会うことはいわゆる超売れっ子クラスでもほぼない。(もちろん洋舞の批評家もあまりいない。)その人がとても研究熱心だということを私は知っていた。ダンサーとしてもある重要なコンクールの一位をとっているぐらい踊れる人だ。それでいて明晰な頭もある。私に対しても「私は踊りを見ていますよ」とおっしゃり、「どんな批評家になんて書かれても私は気にならない」と嫌味でなくさっぱりとおっしゃるぐらい自信がある人なのだが、こういう時は流石に頭が下がる。プライドが高くて肩で風をきっているタイプにはない良さがある。(勿論、超ナルシストはナルシスなりの孤高と味わい深さがあるわけで、最終的には作品や仕事の水準が問題になるわけだが。)研究熱心でとても賢いのだ。


帰り際にアルス・エレクトロニカで仕事をしながらも、同時進行でこんなこともやっている自分自身の存在を興味深く思う。


葛タカ女 第20回タカ女舞の会

「八島」「蛙」「雪」
演奏:富山清琴

媒体にてレビュー

国立劇場 小劇場)