ロシア&ボリショイ バレエ・コンサート (19日観劇)

東京は町田の劇場まで行った。町田は日本で最大規模の古本屋、高原書店、がある街としても知られている。(もっともライター向けのツボかもしれないが。)駅から少し歩いたところに劇場がある。町田や新百合ヶ丘多摩ニュータウンといった多摩地区の街には優れたスペース・劇場がある。意外に盲点なのだがチェックをしてみると良いだろう。

本当は19日に見たのだが、川口ゆいさんのインタビューと重なるので20日に書く。
公演パンフレットによるとロシアでは氷点下の気温の下、地下鉄に乗って劇場に観客が通うのだという。ついこの間、北海道に行ってきたばかりなので北海道の街中(特に小樽http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20070408)でロシア語の看板を良く見ていたことから北国が懐かしくなった。ローザンヌのような海外のコンペにでる若いバレリーナの卵たちに経験を積ませるために様々な試みが行われているようだ。

第7回 まちだ全国バレエコンクール開催記念
ロシア&ボリショイ バレエ・コンサート
ヴィァチェスラフ・ゴルディエフと仲間たち

 ここ数日突然に冷え込んでいる東京ではロシア&ボリショイ バレエ・コンサートが開かれた。「ラ・シルフィード」や「白鳥の湖」(第二幕よりアダージョ)などポピュラーな演目からなかなか見ることができない作品まで幅の広い作品が上演された。
 中でも目を引いたのは「盲目の少女」(ゴルディエフ振付)だ。少女役をロシアで18年バレエを学んだ千野真沙美を、少女の相手役であり心の支えを描くのがユーリー・ブルラーカだ。千野は清楚で洗練された踊りを見せる卓越した踊り手だ。両目の見えない少女現れると彼女が感じる世界や苦悩を男が傍らから描き出していく。構成のきいた作品だ。民族音楽に沿って踊られる「カチューシャ」(エリスレール振付)では紫色の衣裳をまとったナタリア・アンタノービッチが音楽に沿って表現力豊かに踊る。踊り手の表情が豊かで味わい深い内容だ。「I am waiting for love」(ヤチュービッチ振付)は現代的な作品といってもいい作品だ。リュミドラ・カナバローヴァが愛を失い、愛を求める女性の姿を叙情的に描き出す。クラシカルな作風と普遍的なモチーフが小品にゆるぎない強さあたえている。現代舞踊でも良く踊られるような作品に近いのが「パガニーニ」(ゴルディエフ振付)だ。老いた音楽家と音を抽象的に表現する踊り手がバレエをベースにしたモデルネ・タンツのような抽象表現を踊る。ヘンデルの曲に沿って芸術家の苦悩がドラマティックに描かれた。「”ゼンツィアーノの花祭り”よりグラン・パ」は明るい演目だ。ナタリア・アンタノービッチとアンドレイ・エフドキーモフが初々しく踊るとその背景をコールドバレエ(町田バレエ連盟・バレエTAMA)が華やかに描く。他にも古典から現代まで幅の広い作品が上演された。最後はおなじみ「”ドンキホーテ”よりグラン・パ」で締め括られた。
 ロシアバレエというといかにもものものしくそれらしい演出などがあることも多いが、ロシアバレエの持ち味が明るくそして味わい深く描かれた会だった。何より出演をしたこのエリアの若き踊り手たちにとっては良い機会になったのではないだろうか。

(町田市民ホール)