今月のダンサー:07年2月 猪俣陽子さん

(C) Yoko Inomata、 NBA Ballet

今月の2月24.25日にNBAバレエ団( http://www.nbaballet.org/ )は「バレエ リュスの夕べ」としてバレエ・リュスにまつわる様々な作品を上演する。「バラの精」でラスタ・トーマスと共演することになっているのは猪俣陽子さんだ。

猪俣さんはスターダンサーズ・バレエ団時代から人気がある踊り手だった。その後にアメリカに渡られサンディエゴ・バレエで踊っていた。近年、帰国をしてNBAバレエ団で踊っている。そこで近況も含めていろいろ伺ってみた。


Q1. この度はNBAバレエ団の公演で、ラスタ・トーマスさんと踊られるようですが、まずはその辺りからお話ください。

ラスタ・トーマスさんと共演できるとは思ってもいなかったので、とても嬉しいです。こんな機会をいただけて安達哲治先生をはじめとしたバレエ団の先生方にとても感謝しています。演出家のヴィハレフ先生が昨年の7月にいらした時に、バラの精の少女の役を覚えるように言われ、振りをいただきました。オリジナルを壊さずに、かつ、私らしく夢見る少女の役をラスタ・トーマスさんと楽しんで踊ることができたらよいな、と思っております。

Q2. 今月の本番が楽しみですが、ニジンスキーの世界は踊っていていかがですか?

とても興味深く、面白いです。20世紀初頭バレエ・リュスの時代のロマンティシズム、エキゾティズムがひしひしと感じられます。バラの精とレ・シルフィードはどちらも、ある人物の夢の中の出来事です。これといった物語もなく、その人物のフィーリングが物語です。そのフィーリング、感情の高まりや恍惚感を見る方と共有する訳です。音楽と共にある、1つの絵画として美しくありつつも、その中に何かフィーリングがあるのです。その後のバランシンの世界にも通じます。実際、レ・シルフィードの手をつなぐコールドなど、共通点を感じます。また、バラの精の男性の振りを見ると、ニジンスキーの魅力が今でも感じられます。両性具有的でありつつ、目を見張るような男性的なテクニックがあるのです。ラ・カルナバルは聞いたことのあるメロディーがありつつも、作品は知られていませんし、ポロヴェッツ人の踊りはエキゾティックで非常に迫力があります。とても見ごたえの公演なるのではないかと思います。


Q3. 以前はスターダンサーズ・バレエ団で踊っていらした姿が印象的でしたが、スターダンサーズ・バレエ団、アメリカ(サンディエゴ・バレエ)を経てご自身の中で発見してきたもの、何か変化してきたものはありますか?

スタダンでは昭和の学校時代からの流れの英国式のスタイルのピーター・ライト版のクラシック作品や、マクミラン、また、アメリカのスタイルでスピーディな動きのバランシンの作品、日本の創作ではカンパニークラスを担当なさっていて、フランクフルトで学んでいらした鈴木稔先生の作品を中心に踊ることができました。チューダーや、ナチョ、フォーサイスの作品も身近に感じ、見ることからも学ぶことができました。

その後のアメリカでは、クラシックはスピーディなテンポになっているものが多く、ネオクラシックなパドドゥ作品や、エンターテイメント性の高い作品を多く踊っていました。

今、NBAでは私にとって初めてのロシアのスタイルのものにビハレフ先生の下で取り組んでいます。最初はとまどいがありましたが、バレエミストレスでいらっしゃる大畠律子先生のアドバイスなどをいただきながら、身につけられるように努力中です。
厳密なターンアウトやポジション、力強いダイナッミックな動き、繊細なポードブラなど、バレエの基礎として絶対に必要なことを高いレベルで要求されます。とても勉強になり、発見も多く、やりがいがあります。そして、創作では安達先生や執行先生の作品に触れることができて、とても新鮮です。今後、トワイラ・サープの作品なども上演する予定なので、楽しみです。


Q4. その時代からHPを作られたり、アカデミックなデモンストレーションからアーティストとのコラボレーションなど様々な活動をされてきましたが、何か考える事があったのでしょうか?

バレエダンサーであっても知的かつアクティブに色々な活動をし、多くの方にバレエを楽しんでいただける環境を作っていくように努力することは大切なことだと思います。特に日本では・・・。昭和音楽芸術学院で学んだことや、スターダンサーズバレエ団の総監督であった太刀川瑠璃子先生の影響もあると思います。また、興味をもったことや、自分のアーティスティックな感性で「やりたい!」と思うことは、思わずやらずにはいられないのです。それは自分の踊りにとってもプラスになることではないかな、と思っています。


Q5. 4とつながるかもしれませんが、なぜダンサーになろうと思ったのです
か?

幼少の頃からの自然な流れです。踊ることやバレエを愛していて、家族のサポートも受けることがきて、ダンサーになることができました。


Q6. スタダンの後はアメリカにいらしたようですが、どのようなことをなさっていたのでしょうか?

San Diego Balletに所属し、クラシックやレジデンスのコリオグラファーのネオクラシックなどを踊っていました。

Q7. これからなさってみたいことをお教えください。

現役として、色々な役や、色々な作品をどんどん踊っていきたいです。


プロフィール:
猪俣 陽子
1994年 ローザンヌ国際バレエコンクールに出場後、スターダンサーズ・バレエスタジオに入所、新井咲子、アベチエに師事。
1998年昭和音楽芸術学院を第一期生として卒業し、スターダンサーズ・バレエ団へ入団。
同バレエ団にて2002年までの全公演に参加。
2002年〜2005年米国サンディエゴ・バレエ団に所属、「くるみ割り人形金平糖の精などを踊る。
2003年埼玉全国舞踊コンクール読売新聞賞
2004年横浜バレエコンクール入賞3位受賞
(写真、プロフィール共に、NBAバレエ団HP:http://www.nbaballet.org/vw_inomatayouko.html より作家の許可に基づき転載)


近い舞台のスケジュール:

3月10日、11日(詳細はHPからチェックしてください。)
愛知芸術劇場小ホールの新進芸術家の作品に出演します。
振付家は山田洋平さん、WSの監修は深川秀夫先生です。
http://www.aichi-new-artists.com/dance1.html


4月30日 第13回スプリングフェスティバル/中野ゼロ
6月1.2日 第4回トゥール・ヴィヨン公演/メルパルク
8月4.5日 第8回ゴールデンバレエコースター/メルパルク
9月17日 第10回NBAバレエ団アトリエの会/中野ゼロホール
11月19日〜12月9日 NBAバレエ団中国招聘海外公演
中合作バレエ「鵲の橋」公演
(北京3回、北京では国立オペラ劇場のこけら落とし公演として参加、上海3回、香港1回、帰国後東京公演1回)
12月22.23日 第18回クルミ割り人形公演/中野ゼロホール
12月 日中合作バレエ「鵲の橋」帰国公演/場所未定

(http://www.nbaballet.org/yotei.htmより転載)