第30回全国合同舞踊の夕べ

第30回全国合同舞踊の夕べ
日本バレエ協会

 各地方のバレエ作家の作品を見ることができる公演。コンテンポラリーダンスといいえる作品が多かった。現代舞踊協会の地域の作家の作品を見ることが出来る企画「夏の祭典」にも通じるものがある。
中でも「BEAT TIME」(中部支部 振:近江貞美)はすぐれた作品だ。エスニックからアフリカンまで様々なリズムの中で、黒いバレエダンサーたちがリズミカルに踊る。振り付けはオフバランスで身をしならせるようにダイナミック動いたかと思うとリズミカルに踊るといったように現代ダンスといいえる新しい内容だ。美意識を鋭角に持つことが重要だろう。
 また「ピアノ・コンチェルト―扉―」(関東支部 振:大岩静江)はエジプト神話を素材にとった人間の生と死の物語だ。黒人ダンサーを起用し、荒々しい肉体を描いたかと思うと、日本人ダンサーたちも神話世界を描いていく。構成も振り付けも90年代以後を感じるものだ。筋をさらに明確にするとより内容が伝わってくるといえる。
 一方「アイ・ガット・リズム」(中国支部 振:貞松正一郎)はミュージカルのようなダンスナンバーだ。夜の街を背景に若い男女たちが明るく朗らかにダンサブルなシーンを踊る。セノグラフィーはごくシンプルだが、まるで街中で踊るように開放され解き放たれた踊り手たちの表情が良い。中でも宮内真理子の艶やかさが心に残った。
 スタンダードなバレエスペクタクルは「コッペリア・ディヴェルティスマン」(東京支部振:坂本登喜彦)と「オーロラ姫の結婚」(甲信越支部 振:M・プティパ)だ。「コッペリア」は私も好きな演目の1つだが、その中でも代表的なシーンをドリーブの曲に合わせて上演した。物語の筋が見えるとなお良いが、ロマンティックバレエの味わい深さをコンパクトに見せた。また「オーロラ姫の結婚」ではポピュラーなシーンとディヴェルティスマンで観客の喝采に応えていた。
 地方のバレエ作品を見る機会があまりなかったが、その幅の広い表現は新鮮で印象的だった。

(8月11日 新国立劇場オペラ劇場)