DCS 授賞式 その他

第37回舞踊批評家協会賞決定

★2月18日の選考会議によって、以下の通り決定しました
みなさん、おめでとうございます。本日、授章式を行いました。

 本 賞
  森下洋子「シンデレラ」
  室伏鴻「quick silver」
  金森穣・黒田育世「ラストパイ」
  内田香「なみだ」
  花柳扇蔵「衣川弁慶」
 新人賞
  菊地研「ピンクフロイド・バレエ」
  向雲太郎「2001年壺中の旅」
  白井剛「禁色」
  花柳せいら・西川扇重郎・花柳貴代人・若柳里次朗「冒険と記憶」
昨年および過去35年間の受賞者は下記のサイトをご覧下さい。
http://dcsjp.hp.infoseek.co.jp/index.htm
http://dcsjp.hp.infoseek.co.jp/listaward.htm

本日お越しいただいた皆様どうもありがとうございました。

間章作 素踊りの会

常磐津「廓八景」おそらく1830年ごろという江戸時代に成立をした作品。素踊りであるわけで女性に変化しないで藤間が踊る。普通は舞台化粧を通じて見える表情が全て普通の男性であるわけでその辺りが面白い。作家は藤間流ではすでに評価をされている踊り手だが宙を見ながら踊るその表情は普段洋舞に慣れた身にしてみると今一歩演技が欲しい。手足の動きは流石に見事でゆらりと動いたかと思えばすっと女性の表情を決めてみせる。京劇などでも取り上げられるジェンダーについて考えさせられた。
「心象・定家」は藤原定家にモチーフをとった創作作品だ。邦舞の創作は独特の世界であり日本的なイメージが独創的に発達をしているという印象を受ける。定家とくれば優れた歌人であり新古今和歌集の選者としても知られる。雲が舞台いっぱいに立ち込める中で扇を手にした西川がその世界を描こうとする。現代舞踊の創作作品と比べてみると、台詞に筋を語らせている分、歌の持つ雅さや歌人の世界をイメージを通じて瞬間、瞬間に込めると良いのではないかと思った。
私は通常洋舞を論じているが、伝統芸能の中で最も好むのは能である。イメージを瞬間、瞬間に集約された表現が私にとってのダンスを感じる表現でありそれに強く惹かれるわけだ。これは現代舞踊を論じていても1つの内的一貫性があるだろう。
常磐津「末広狩」は明治11年ごろの作品だ。踊り手達が時には傘を広げたり時には扇を広げたりしながらユーモラスな表現を見せていく。明治維新直後の日本社会ではこのような作品が上演されたのだろう。笑いの世界は明治以前から続くものを感じる。しかし舞台演出には国劇などを通じて近代化を図ろうとした明治という時代の新しい感覚を感じたのも事実だ。
邦舞と接して思うのは、戦後、社会が変化したとはいえ、戦前の舞踊界で邦舞が大きな位置をしめていたということである。故に洋舞をやっているから邦舞は良く知らないといいにくくなったこの頃である。


国立劇場 小劇場)