未國「蛇女」



 実力派がそろった直球でスタンダードな創作作品である。「卒塔婆小町」では冒頭若い男が自らの生きる道を模索している。舞台を歩き、宙を見つめる男。そこに小町(真忠久美子)が現れる。真忠はしなやかな肉体で宙を走り舞台を彩り小野小町という宿業の女を演じる。小町が愛した男は皆死ぬ。百夜通うと誓い、男は日増しに衰えていく。その傍らで女は華やかに哀しく舞い続ける。真忠の悟りながらも無垢な表情と男の熱心さが対照的だ。やがて若い男は力尽きる。
「歌舞俗謡」は前川による日本的なイマジネーションを作品に落とした感触がある作品である。「まるしかく」、「新生代沖積世」といった作品は現代詩人が書きそうなタイトルだ。後者は宮沢賢治の世界からとった言葉だ。子どもにでも解りやすいような言葉遊びを盛り込んだリズミカルな朗読と共に踊り手たちが太古の世界の様に踊る。山田茂樹の男性ならではの官能的な肢体が見事だ。前田新奈もバレエで踊るときととい出で立ちが異なり東洋的な世界に溶け込み踊る。ミュージカルやスーパー歌舞伎に近いテイストもあるポピュラーなタッチだ。
現代という時代の中でも伝統芸能の若手作家たちの創作と異なりこの作品は完全に洋舞の踊り手からの視点によるものである。かつて19世紀から20世紀にかけての近代化の流れの中では民謡のようなロマン主義的なモチーフと身体文化的な美意識が結びつくことがおきることで、新しい楽器などモダン文化と共にこの作家の作品に似た持ち味の作品たちを生み出した。21世紀の現代社会で彼らが実現した伝統と現代を結びつけるその切り口はそんな歴史を想い起こさせる下りもあり大変興味深く思っている。


(スフェアメックス)




die pratze dance festival ダンスがみたい!<新人シリーズ4>

1/15(日) Eグループ
酒井幸菜セミの声がきこえる。そして、夏の匂いと。」
● お宝。「真昼に見た夢」
● 根岸由季「graze」

当企画後評にてレビュー

作品が重ならない形で別媒体でもレビューをすることを考えています。