渋谷・Dance Venus

(C) Ueno Masako :山田茂樹 他

Dance Venus スタパフォ Vol.VIII

Dance Venusのスタジオパフォーマンスは昨年の10月から始まったとのことだが
先月に引き続き今月も足を運んだ。今月頭にはロンドンから戻ってきた白井麻子
と柴田恵美がKappa-Teというグループで舞台を行っているがこのところこのグループ
に関係がある若手の活動も目立つ。
この手の舞台のいいところは、いわゆる大舞台にのる前のアイデアや、ちょっと
した実験が見られるということだ。
前回と重なる面々もいるなかで若干異なるラインアップで楽しむ事ができた。
岡庭秀之は先月に引き続き今回も中心的な役割を舞台全般で果たしていた。
小雪(しょうせつ)」では武元賀寿子がゆっくりと手を曲げると、それに
合わせるように同じように手を曲げて動きを重ねていく。二人が同じフォーム
をとると、それぞれが重ねてきた時がその場の空気を作り上げ織り成していく。
背景には切なくPoeticな楽曲が流れ続ける。江口=金井の練成された構成や
ムーブメントから離れ、武元が確立してきたムーブメントを垣間見る作品だ。
思考にたよる作家も多いが、武元は動きを軸にして繊細な間合いをみつけてきた
ようにも感じることが出来る。時折、武元より若い内田香や飯塚真穂が反復し、
何度も使用するようなクリシェが他の作品に顔を出すことがあるが、同世代の
踊り手たちと異なる点があるとすれば、何度も何度も様々な舞台で繰り返して
きた技法が反復され混合していることだ。ソリッドにシャープにまとめて欲しい
と思う事も時にはあるが、この混在した風景が彼女達らしいといえる。
層の厚い技法の中で熟練した2人の作家が余裕を持って作品と向かっている
印象を受けた。
BlueLake真里(Vo)と木室陽一(ダンス)の「ぬ、ひょらもんひょん」は
味わい深い作品。あたかも詩集を手に持ち爪弾いているような芸術家的な
空気をもった小室がたたづむ中、真里が表情豊かに歌い彩る。木室は現代舞踊
の踊り手らしい正統的で鍛えられた肉体を持っている踊り手だ。芸術家
的な風貌の男が悩ましくたたづむところに可愛らしい女の声が寄り添う。
木室にとっては自身の世界観を現すような表現技法を確立するのが課題
だといえる。
古里和歌子「キミヲサガシテ・・」はアメリカンモダンダンスからの影響
を感じさせる自然的な作品だ。自然の風景を思わせるような演出や女の情念が語られる
なか、古里はのびやかに踊る。このPureな設定がつくりだす動きが心地よ
い。踊り手は光の中で伸び上がり宙を描く。演出や構成をさ
らに手を入れることで伸びる作品だ。
前記のKappa-teで活躍をしていた柴田恵美と佐々木朝美(Vo)による「
Chitta&Mary」もまた作品の構成をしっかりすると伸びる作品だ。
床に大きく横たわった柴田が歌声の中でダイナミックに踊りだす。前半、
作家のテンションと意識が中々像を結ばず残念だったが、後半に明確な構
図の中に表現が入り作品の緊張感が一気にあがった。歌い手の左手奥から
踊り手が現れ、歌声の中で踊りだすと1つの様式に入った事もあるのだが、
柴田がダンスという表現の中で探求をしている世界観が一気に滲み出てくる。
トラッドな技法に縛られる必要はないが明確な技法を用いると表現の効果が
高まるという良い例といえる。
佐藤昌枝の「眺めのいい白い部屋に」は逆に作家の表現を明確に
する演出が必要だといえる。佐藤は近年このグループの舞台の中で何か
を模索するような姿勢を感じてきた踊り手だ。前回のスタパフォでは
それが次第に像を結びだしているのを感じた。今回も同様に意識の焦点
が次第にあいだし、踊りの背後にある感性が深くなっている事を感じた。
肉体を軸にした作品といえるのだが、俳優的な髪型や衣装がピントを
ずらしてしまうのが残念だ。何かを掴みだしているのは明確なため
今後の活動が気になる。
加賀谷香「秋晴れ女 狂想」は加賀谷のスタンダードといえるような
女の情念だ。過去にも何度もこの手の作品を上演しているため、それだけ
思い入れが深いモチーフと言える。女性の群舞などで描かれてきた
作品を一変させたのは岡庭の演技力だろう。思いにふける女を岡庭が
がっしりと胸に抱きしめ、加賀谷を手にのせるといった情景では
濃密な空気が漂った。
インプロ「植物の鼓動〜」では出演者の異なった動きが織り成す
層の厚い情景を演出を通じて詩的に昇華するというこのグループ
特色といえる技法が多く見られた。ノスタルジーや「遥かなるどこに
でもない場所」といったモダニズム的な異郷ではないが日常の背後
にあるようなファンタジーやポエジーに情景を昇華するのが武元の
1つのスタイルといえる。中でも印象的だったのが上半身裸で
踊る山田茂樹のエロスだ。(写真)優男が繰り出す肉体的でありながら
繊細な上半身の表情と躍動する肉体はフレッシュで心地よかった。

(ソワレ Studio Ha-Ru

Photo: 上野昌子(Ueno Masako)

ETC

朝からひたすらPCに向かって作業をしたあと、午後から移動。
渋谷ではBoAの「抱きしめる」がひたすらかかりまくっている。
http://www.avexnet.or.jp/boa/index.html
駅ビルの中の広告でもそうだし街頭テレビもこれ一色。
PVの中のダンスは昔から結構好きではあるのですが、

湘南から東京圏に越してきてつくづく都心に住んでいると
思う。満員電車には相変わらず閉口させられるけれども。