マクミラン没後25周年
小林紀子バレエシアター「マクミラン没後25周年記念公演」
注目をされたマクミラン「春の祭典」(日本初演)は黒い衣裳の踊り手たちが舞台いっぱいに広がる。シンプルで意外だが素晴らしいダンス表現であり、しっくりくる内容だ。マクミランの興味深い横顔と振付家としてのスケール感を感じさせる。黒という混乱の時代を想わせる色調を用いたファシズム台頭前の世界、1920年代〜30年代良さを想わせる「LA FIN DU JOUR」(日の終わり:日本初演)では島添亮子・高橋怜子の演技が冴える。ピアノ・オーケストラを通じて紹介し時代に迫った。アシュトン「バレエの情景」は稽古などのシーンも入る軽快な演目といえる。指揮はポール・ストバート、演奏は東京ニューフィルハーモニック管弦楽団。前者2作品は現代社会を意識した内容と考えることもできる。
(8月27日、新国立劇場オペラパレス)
及川廣信「カフカのサーカス」
サーカスのスペクタクル性、現代社会を穿ってみる視点に注目が集まりリバイバルな昨今だ。作家カフカの世界には「サーカス」が登場する。及川廣信はそこに着目した新作を発表した。一座の進行役はカフカの生涯や作品に登場する場面を寓意(アレゴリー)のように描写していく。生前は無名だった作家(蒼浩人)の表情を織り交ぜながら情景は展開する。作家の作品も次第に入り時混じっていく。舞踏の相良ゆみはアトラクションの場面で久世龍五郎、坂上健と共にバレエシーンも披露し客席を沸かせた。NYCから帰国中の貝々石奈美のコンテンポラリーバレエが繰り出す尖鋭なムーヴメントや小劇場系でパフォーマンスで名を馳せるスピロ平太の笑いを誘う捨て身の芸もサーカスの民衆娯楽の味わいが加味され味わい深い。
及川のメソッドに注目した前回の大野慶人との共同作品に続く本作は、作中の表現や構成にそれが応用されており、ジェストを中心に身体技法が見事だ。蒼や演劇でも活躍する清水穂奈美が継承するアルトーメソッドを自然に作中に盛り込み作品を成功に導いた。及川の近年の公演ではメソッドの特色や独創性そのものをテーマにしてしまう事で、独自な世界観を理解できるか/できないかという一線が作品にあったが、この作品では寓意やサーカスの持つ独特な親しみやすさと結びつくことで優れた表現を導いた。フラヌ―ルとして戦後を生きてきた巨匠の歩みが送りだした最晩年の名作と言っても過言でもないかもしれない。本作に及川は声で出演。さらなる活動についてもメッセージでアピールした。
及川のグループは土方巽・大野一雄らの舞踏に対抗するように、パフォーマンス・フェスティバル・IN・ヒノエマタやShu Uemuraとの活動を通じて、浅田彰と情報社会論で並んで注目されていた粉川哲夫や現代の演劇評論の大家たちと独自の場を構築してきた。及川の系譜が80年代に八戸で実現させたイベントにカフカ・コロックがある。これは後に「カフカとサーカス」(三原弟平、1991)などの著作につながる企画だった。自身の活動から生みだしてきたコンテクストの中から、カフカとサーカスという2つのキーワードに焦点をあてることで良作を送りだした。
(8月22日、D倉庫、ソワレ)
「Summer Mixed Program」
スターダンサーズ・バレエ団「Summer Mixed Program」
バランスのとれたプログラムによる優れたバレエ公演が行われた。ビントレーの「Flowers of Forest」ではスコットランドの歴史や自然が描かれた名作の日本初演。吉田都とフェデリコ・ボネッリも出演した。バランシンの「ワルプルギスの夜」では渡辺恭子らが盛り上げた。「眠れる森の美女」よりグラン・パ・ド・デゥはオニール八菜(2016年:ブノア賞)と日本でエトワール昇格をしたユーゴ・マルシャンを起用し話題性を強めている。男性ダンサーたちとはフォーサイスの人気の演目「N.N.N.N.」も上演した。ダンスの面白さ、ムーヴメントの魅力を通じて幅広い内容を楽しめる企画だ。
(8月5日、新国立劇場オペラパレス)
新感覚ダンス劇!「何をするにも最高の天気第二弾〜Never be d
新感覚ダンス劇!「何をするにも最高の天気第二弾〜Never be defeated〜負けず嫌いなオトナ達」出演:( SALAH、KITE(カイト)、池田美佳、FUKO、金田あゆ子・多和田秀弥ほか)で池田はコンテンポラリーの枠に収まることなく、新ジャンルを模索する。バレエの金田あゆ子、ポップダンス、ブレイクダンスのトップダンサーたちと地球へやってきたエイリアンをテーマにしたコミックなダンス演劇を展開する。エンタメと芸術の接点から説得力のある身体表現を繰り広げた。
(DDDシアター、5月11日)